今回の7分で知る名著では、理論物理学者・宇宙物理学者である、佐治晴夫氏の『この星で生きる理由 ー過去は新しく、未来はなつかしくー』を紹介します。テーマは、「未来が過去を決める」、「これからがこれまで」を決めるといったお話です。
著者は「時間論」の学者であり、「時間の流れ」について刻々と語りかけてきます。
未来が過去を決める、「これから」が「これまで」を決める。
佐治晴夫氏はいいます。
「よく、『過去・現在・未来』といいますね。この時間の流れから考えると、『これまで』が『これから』を決めると思うかもしれません。でも、いまみなさんが思い浮かべている過去は、脳の中にメモリとして残っているものに過ぎず、実在しているものではありません。とすると、これからどのように生きるかによって、過去の価値は、新しく塗り替えられることになります。未来が過去を決める、『これから』が『これまで』を決めるのです」
時間は未来から過去に流れている。
“未来が過去を決める、『これから』が『これまで』を決める”-。
佐治氏のこの考え方は、チベット密教における「時間は未来から過去に流れている」という教えに通づると思います。
一般的には、「時間は過去から未来に流れる」という考え方ですが、チベット密教では、時間は未来から過去に流れ、原因は未来にあり、結果は過去にあるという教えがあります。
佐治氏のメッセージ、そして、チベット密教の教えから、私は次のように解釈しました。
「どんな過去にも関係なく、未来は自分の意志や意思、イマジネーションによって変えることができるのだ」
つまり、理論的には次のようになるのではないでしょうか-。
「未来において何かの目標を達成した自分がいる。そして、その未来の自分の立場から、いま現在の自分を見つめてみる。そうすると、これまでの生き方でなく、新しい生き方へ自らを変える必要があるのだ」
『ある』と『ない』を超えたところに心理がある。
佐治晴夫氏はいいます。
「『ある』と『ない』を超えたところに心理がある。目に映るもの、感知するものすべては心の問題。他者との関わりにおいて、論理的矛盾がないものを心理であると想像しているに過ぎない。すべては心のフィルターを通しての情景として、私たちはものごとを見て感じ取っている」
佐治氏の言葉は、「大事なものは目には見えない。心で見なくちゃね」という、『星の王子さま』(サン=テグジュペリ)の言葉を意識しているようです。
「自分を深く見つめること」が大切である
佐治氏は、「心で見る」ようになるためには、「自分を深く見つめること」が大切といいます。
佐治氏言葉を解釈するのに、アルフレッド・アドラーの言葉を借ります。
「他人の目で見、耳で聞き、心で感じるのだ」
これは、相手側がものごと(出来事)の「意味」まで伝えてくれることを期待するのではなく、こちらからその「意味」を探るという姿勢を取ることが大切であり、さらに相手と対等な立場に身を置くことで、はじめて共感できるものがあるのだ、ということをいっているのです。
まとめ
過去のトラウマに苦しむことなく生きるためには、「あらかじめ自分の未来を設定する、未来の目標を決めてしまう」ことが、非常に有効であるということです。私たちは、自分の未来の目標を決めることで、「意味ある人生」を歩むことができるようになるのでしょうね。
【アルベルト・アインシュタインの言葉】
「我々がつくり出す世界というのは、我々の思考の賜物なのだ。世界を変えるには、まず考え方を変えなくてはならない」
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