内向型の「顕在意識と潜在意識」二つの自分を考えてみる/「頭ではわかっている」の正体とは?第2回

「頭ではわかっている」の正体
~顕在意識と潜在意識、二つの「自分」を考えてみる

「頭ではわかっているんですけどね……」私たちは、ときどきこんな言葉を口にします。

運動したほうがいい。少し休んだほうがいい。
無理をしないほうがいい。もっと自分の時間を持ったほうがいい。

でも、本当は、やりたいことがある。

もう少し仕事を減らしたほうがいい。人間関係も、少し距離を置いたほうがいい。

頭では、ちゃんとわかっている。それなのに、なぜか行動できない。

あるいは、
「やったほうがいい」とわかっているのに、やりたくない。
「もうやめたほうがいい」と思っているのに、やめられない。
「自分らしく生きたい」と思っているのに、今までと同じ毎日を繰り返してしまう。

これは、意志が弱いからなのでしょうか。
自分に甘いからでしょうか。

そうではありません。
そこには、「頭で考えている自分」と、「心や身体の奥で感じている自分」の違いがあるのです。

1.私たちの中には「二人の自分」がいる?

少し乱暴な言い方をしてみましょう。
私たちの中には、「考えている自分」と、「感じている自分」がいる。

もちろん、本当に二人の人間がいるわけではありません。
でも、日常生活を振り返ってみると、確かにそんな感覚を覚えることがあります。

「今日は早く寝よう」と頭では決めたのに、なぜかスマートフォンを見続けてしまう。
「今回は断ろう」と思っていたのに、頼まれると、「まあ、いいか」と引き受けてしまう。

「もっと自分の時間を大切にしよう」と思っているのに、誰かから誘われると予定を入れてしまう。
「会社を辞めたいわけではない。でも、今の働き方はちょっと違う氣がする」
そんな曖昧な感覚を抱えながら、何年も同じ生活を続けている。

頭では、わかっている。でも、行動は変わらない。
なぜなのでしょうか。

2.顕在意識は「考える自分」

ここで、前回少し触れた、「顕在意識」というものを考えてみます。

顕在意識とは、簡単に言えば、「今、自分が自覚している意識」と考えるとわかりやすいでしょう。

「今日は何を食べよう」「明日は何時に起きよう」「この仕事をどう進めよう」「この人には、どう返事をしよう」
といったことを考えている自分です。

論理的に考える。比較する。判断する。計画する。言葉にする。

顕在意識は、私たちが日常を生きるうえで欠かせないものです。

特に社会人として生きていくためには、「何が正しいか」「何をすべきか」を考える力が必要になります。

だから私たちは、子どもの頃から、「よく考えなさい」と教えられてきました。

3.そして、もう一つの領域がある

一方で、「なぜかわからないけれど、嫌だ」「なんとなく、この人とは合わない気がする」
「理由は説明できないけれど、こちらのほうが落ち着く」「この場所に来ると、なぜかホッとする」
ということもあります。

こちらは、すぐには言葉になりません。
頭で整理する前に、「なんとなくそう感じる」のです。

ここでは、こうした自覚しにくい心の働きや、過去の経験、感情、記憶、習慣などが影響する領域を、広い意味で「潜在意識」と呼んでみます。

心理学では「潜在意識」という言葉が、必ずしも一つの厳密な概念として使われているわけではありません。
無意識や自動的な心理過程など、さまざまな考え方があります。

ですから、「潜在意識には何でもお見通しの自分がいる」というような単純な話ではありません。

ここで大切なのは、自分では意識していない心の働きが、私たちの感じ方や判断、行動に影響している という視点です。

4.「頭ではわかっている」の裏側

たとえば、「もっと休まなければ」と思っているとします。

顕在意識では、「最近ちょっと疲れている」「だから休んだほうがいい」と理解しています。

ところが、いざ休もうとすると、「こんなことで休んでいいのか」「まだ仕事が残っている」「みんな頑張っている」「自分だけ休むわけにはいかない」と感じる。
すると、休めない。
ここで面白いのは、「休んだほうがいい」と考えている自分も本当なら、「休んではいけない」と感じている自分も本当だということです。

どちらかが嘘をついているわけではありません。

ただ、そこに異なる価値観や経験が存在している。
私たち中高年は、歳を重ねれば重ねるほど、たくさんの経験を積んでいきます。

褒められた経験。叱られた経験。失敗した経験。成功した経験。
恥ずかしい思いをした経験。人に助けてもらった経験。人を助けた経験。
頑張ったことで認められた経験。頑張ったのに報われなかった経験。

そうした経験は、一つひとつ、「こうすれば大丈夫」「こうすると危ない」という自分なりのルールをつくっていきます。
そして、そのルールの多くは、普段いちいち意識されません。

たとえば、「人に迷惑をかけてはいけない」「弱音を吐いてはいけない」
「最後まで責任を果たさなければならない」「期待されたら応えなければならない」
「仕事は大変なのが当たり前」「我慢することも大切だ」
こうした考え方は、決して悪いものではありません。

むしろ、私たちを支えてきた大切な価値観でもあります。

問題は、そのルールが、今の自分にも本当に必要なのか、ということです。

5.昔の「正解」が今の自分を縛っているかもしれない

ここが、内向型中高年にとって大切なところです。

若い頃には、とても役に立った考え方があります。
「努力すれば認めてもらえる」「我慢すれば乗り越えられる」「責任を果たせば信頼される」「周囲に合わせることも大切だ」
そうやって、私たちは社会を生き抜いてきました。

だから、それらを簡単に否定する必要はありません。

むしろ、「その考え方があったから、ここまで来られた」というものもたくさんあるでしょう。

でも、人生のステージが変われば、昔は自分を守ってくれた考え方が、今度は自分を縛るものになることがあります。

たとえば、若い頃には、「何でも引き受けて経験を積む」ことが必要だった。
でも今は、「何でも引き受けなくてもいい」のかもしれない。

若い頃には、「人脈を広げる」ことが大切だった。
でも今は、「本当に大切な人との関係を深める」ほうが心地よいかもしれない。

若い頃には、「会社で評価される」ことが重要だった。
でも今は、「自分が納得できる仕事をする」ことのほうが大切かもしれない。

つまり、人生の後半には、「これまでの正解」を一度見直す時期がやってくる。
そんなふうにも考えられるのだと思います。

6.「こうしたい」より「こうすべき」が強くなっていないか

ここで、一つ質問します。
あなたの日常には、「~したい」と「~すべき」のどちらが多いでしょうか。

「旅行に行きたい」より、「仕事をしなければ」「家族のために頑張らなければ」
「迷惑をかけてはいけない」「この年齢なら、これくらいできなければ」
という言葉のほうが多くなっていないでしょうか。

もちろん、「~すべき」は必要です。
社会生活には責任があります。家族がいれば、家族への責任もあります。
仕事には、仕事としての責任があります。

だから、「全部やりたいことだけやればいい」という話ではありません。

ただ、「すべきこと」だけで人生を組み立ててしまうと、自分が何を感じているのかが見えなくなる。
そこには注意が必要だと思うのです。

ここで、また「隠れ内向型」に戻ってみましょう。

隠れ内向型の人は、「人と関わらなければならない」と考えれば、関わることができます。
「明るく振る舞わなければ」と思えば、明るく振る舞える。
「チームをまとめなければ」と思えば、まとめられる。
「もっと積極的にならなければ」と思えば、積極的になれる。

つまり、顕在意識で設定した目標を、かなり頑張って実行できる。
それは、とても素晴らしい能力です。

しかし、その一方で、「本当は静かな環境のほうが集中できる」
「大勢と会うより、一人で考える時間が必要」
「すぐに答えるより、一度持ち帰って考えたい」
「人前で話した後は、しばらく一人になりたい」
という自分の性質を、後回しにしてしまうことがあります。

そして、それを何十年も続けていると、「頑張っている状態」が「普通の自分」になってしまう。

これが、隠れ内向型に氣付くことを難しくしている一つの理由なのです。

7.潜在意識を「正しい答え」と考えない

ここで、一つ注意しておきたいことがあります。

「潜在意識」という言葉を使うと、「潜在意識こそが本当の自分であり、そこに従えばすべてうまくいく」と思ってしまいがちです。

しかし、私は、そこまで単純には考えません。
自分の感情も、過去の経験も、思い込みも、すべてが正しいわけではありません。

「怖い」と感じたからといって、本当に危険とは限らない。
「嫌だ」と感じたからといって、本当にやめるべきとも限らない。
「なんとなく好き」と感じたからといって、それが自分にとって最善とも限りません。

だから、潜在意識の声に従うというより、潜在意識から上がってくる感覚を、一度きちんと聴いてみる。

そのうえで、顕在意識で考える。現実を確認する。周囲への影響を考える。
そして、自分なりに選択する。
その順番が大切なのだと思っています。

私は、次の三つの順番が大切なのではないかと思っています。

① 感じる
「私は今、どう感じているのだろう?」
まず、自分の感覚を否定せずに受け取る。

② 考える
「なぜ、そう感じているのだろう?」
過去の経験や現実の状況を考えてみる。

③ 選ぶ
「では、これからどうするのが自分にとって納得できるだろう?」
最終的には、自分で選択する。

つまり、潜在意識に丸投げするのでもなく、顕在意識だけで押し切るのでもない。

その二つを対話させる。

中高年となった内向型には、そんな生き方が合っているのではないでしょうか。

8.中高年だからこそこの「対話」が必要になる

若い頃には、「とにかく前へ進む」ことが必要な時期があります。

考えている暇がない。迷っている暇もない。
目の前の仕事をする。家族を支える。生活を守る。

そうやって走り続ける時期があります。
でも、人生の後半になると、少しずつ状況が変わってきます。

子どもが成長する。仕事で一通りの経験を積む。
責任ある立場を経験する。親のことを考えるようになる。
自分自身の老いも意識するようになる。

そして、「これから先は、どう生きようか」という問いが、少しずつ現実味を帯びてくる。

そのとき、「これまでと同じやり方を、これからも続ければいいのだろうか」という疑問が生まれてくるのです。

だから私は、中高年という時期を、「自分の内側と、もう一度対話する時期」と捉えることがとても大切なのではないかと思っています。

もし今、「頭ではわかっているんだけど……」と思っていることがあるなら。
すぐに行動を変えなくてもいいと思います。

まずは、「なぜ、頭ではそう思っているのに、私は動けないのだろう?」と、自分に聞いてみる。

「怠けているから」「意志が弱いから」と結論づける前に、もう少しだけ、自分の内側を眺めてみる。

すると、「本当は失敗するのが怖い」「誰かに嫌われたくない」
「期待を裏切りたくない」「今まで頑張ってきたものを手放したくない」
「変わることそのものが怖い」「実は、今の生活にも捨てたくないものがある」
そんな声が聞こえてくるかもしれません。

それもまた、あなたの大切な一部です。だから、否定する必要はありません。
ただ、聴いてあげるのです。

9.「自分を変える」のではなく「自分を知る」

私たち中高年は、もしかすると、「自分らしく生きる」という言葉を、少し勘違いしていたのかもしれません。

自分らしく生きるとは、今までの自分を全部捨てて、新しい自分になることではない。

もっと頑張って、もっと積極的になって、もっと自由になって、もっと成功することでもない。

むしろ、「自分は、どういう人間なのかを少しずつ知っていくこと」なのではないでしょうか。

何が好きなのか。何が苦手なのか。
何をすると疲れるのか。何をすると元気になるのか。
どんな環境なら自然体でいられるのか。
誰といるときに、自分を演じなくていいのか。

そして、どんなときに「自分が自分である」と感じられるのか。

その問いに、少しずつ答えていきましょう。

ここまで考えてくると、一つのことが氣になってきます。

私たちは、「自分の本当の氣持ちがわからない」と言います。
でも、本当に何も感じていないのでしょうか。

もしかすると、感じている。
でも、感じたことを、すぐに頭で打ち消している。
それだけなのかもしれません。

「なんか嫌だ」→「でも、仕方ない」
「疲れた」→「みんな頑張っている」
「本当はやりたくない」→「そんなこと言ってはいけない」
「もう少し自分の時間が欲しい」→「今さら無理だ」

この「でも」の連続によって、私たちは自分の小さな声を消してしまう。

そう考えると、中高年になって感じる、あの何とも言えない「違和感」も、少し違って見えてきます。

10.違和感は「邪魔なもの」なのか

もし、「今の仕事に、何となく違和感がある」「人付き合いに、何となく違和感がある」「今の生活に、何となく違和感がある」
のだとしたら。

それは、「考えすぎ」なのかもしれません。単なる疲れなのかもしれません。
環境を変えれば解決する問題なのかもしれません。

あるいは、これまで自分が大切にしてきた価値観と、今の自分が求めているものとの間に、少しズレが生まれているのかもしれません。

まだ、この段階ではわかりません。

だからこそ、すぐに答えを出さずに、聴いてみる。

次回は、この「違和感」をもう少し丁寧に掘り下げてみたいと思います。

11.次回へ

「何となく嫌だ」「何となく疲れる」「何となく違う気がする」
私たちは、こうした感覚を、「気のせい」「考えすぎ」「歳のせい」として片づけてしまいがちです。

でも、もしそこに、自分でもまだ言葉にできていない何か、があるとしたら?

もし「違和感」が、これまで無視してきた自分から届いた、小さなサインだとしたら?

次回は、「あなたの違和感は、何を伝えようとしているのか」というところから、
もう一度、自分の内側を覗いてみたいと思います。

もしかするとそこには、長い間、あなたが聞いてあげられなかった「もう一人の自分」がいるのかもしれません。

中高年お役立ち地位づくりの専門家 松﨑豊

中高年お役立ち地位づくりの専門家 松﨑豊

内向型の中高年起業家専門コンサルタント/しつもんファシリテーター。
「こんなはずじゃなかったのに…」と起業苦戦中の内向型の中高年個人起業家に向けた、ビジネスコンサルティングを提供。
大学卒業後、大手機械メーカーで販売戦略や品質管理に従事。40代でキャリアに挫折し、「人生の目的」を探す中で、自己啓発・心理学・脳科学の世界に傾倒。その後50代で独立するも、「成功法則」を真似ても成果は出ず、「自分らしくない努力」に疲弊。いくつものビジネス講座を受講するもピンとこず、「もう、どうすりゃいいのよ…」といった状態になる。
会社員としても、起業しても、内向型の特徴をうまく活かせず、挫折を繰り返す人生に。
しかし、やがて、「うまくいってる人は、成功法則をパーソナライズして行動をしている」ことに氣づく。そこから、これまでの学びと体験をすべて体系化し、 “自問自考”を軸とした、内向型の特徴を「強み」に転換する「パーソナライズ・メソッド」を構築。現在は、ひとりでも多くの内向型の中高年個人起業家に活躍してほしいという想いを胸に、お役立ちの地位づくり、「オンリーコンサルタント」のポジションづくりに、「1,000日伴走」する『中高年版ヒーローズ・ジャーニー』と銘打ったコンサルティングを展開中。

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