〜「他人からの評価」から自由になる〜隠れ内向型の中高年が歩む「ヒーローズ・ジャーニー」⑦
前回、私たちは、「自分の経験を、誰かの未来に変える」というテーマについて考えました。
長い会社員生活。仕事での成功や失敗。人間関係の悩み。これまで乗り越えてきたこと。
そして、自分では「たいしたことではない」と思っていた経験。
でも、その一つひとつが、誰かの悩みを解決するための、「価値」になるかもしれない・・・。
そんな話でした。
そして、「自分の経験を、誰かのために使ってみよう」と一歩踏み出してみる。
ところが・・・・・・。
ここから、物語は、一氣に厳しくなります。
1.「売れない」
勇気を出して、自分の商品やサービスを作った。
ブログを書いた。noteを書いた。SNSで発信した。知人に話した。
「こんなことを始めました」と伝えた。
そして、待つ。
ところが・・・・・・、
反応がない!ホント、高原の朝のような静けさ・・・💦💦
問い合わせもない。申し込みもない。もちろん商品も売れない。
誰も買ってくれない。誰も相談に来ない。誰も、自分を必要としてくれない。
そんな時間が、続いていきます。
すると、心の中に、こんな声が聞こえてきます。
「やっぱり、自分には無理だったのでは?」
「大した経験ではなかったのかもしれない」
「自分なんかが起業するのは、無謀だったのでは?」
「自分には人脈がない・・・」
「自分には発信力がない・・・」
「自分には営業力がない・・・」
そして、最後に行き着くのが、この言葉です。
「自分には、価値がないのではないか?」

2.ここで少し立ち止まってみたい
でも、本当にそうなのでしょうか?
「商品が売れない」ことと、「あなたに価値がない」ことは、同じことでしょうか?
「記事が読まれない」ことと、「あなたの経験に価値がない」ことは、同じことでしょうか?
もちろん、違いますよね。
それなのに、私たちは、なぜか、この二つを、簡単に結びつけてしまいます。
でも、「売れなかった」という結果から、「自分には価値がない」という結論を出す必要はないのです。
ここで、この連載のテーマである、「隠れ内向型」について、もう一度考えてみたいと思います。
私たちが長年生きてきた社会では、どうしても、「外に向かって活動する人」が目立ちます。
人脈が広い。人付き合いがうまい。
話が上手。営業が得意。
交渉ができる。大勢の前で話せる。
たくさんの人に知られている。
行動が早い。積極的。
リーダーシップがある・・・。
もちろん、こうした能力は、素晴らしいものです。
でも、問題は、「それだけが成功ではない」ということです。

3.「大きな影響」だけが価値ではない
私たちは、「価値を生み出す」というと、どうしても、大きなことを想像してしまいます。
1000人を救う。1万人に届ける。社会を変える。業界を変える。大きな会社を作る。
でも、本当は、そんな必要はありません。
一人の人生を少し良くする。それも、立派な価値です。
例えば、あなたが、中高年の起業相談を始めたとします。
最初のお客様は、たった一人。
その人が、「何をしたらいいか分からなかったけれど、話しているうちに、自分の経験を活かせることに氣付きました」と言ってくれたら・・・。
そして、数か月後、その人が、小さな仕事を始めた。
さらに、「あなたに相談して、本当によかった」と言ってくれたら・・・。
売上は、まだ、それほど大きくない。
でも、そこには、確かに、「誰かの人生を変えた」という事実があります。
これを「成幸」と呼んでもいいと思っています。
私は、これまでの「成功」という言葉とは別に、「成幸」という言葉を使ってきました。
「成功」は、どうしても、売上。地位。肩書き。規模。知名度。数字・・・。
そうした、外から見えるものに引っ張られやすいから。
一方、「成幸」は、「自分らしく生きながら、自分も周りも幸せになっていく」という意味で、捉えているのです。

4.成幸には「自分のものさし」が必要
そして、ここで、とても大切なことがあります。
成幸するためには、「自分のものさし」を持つ必要があるということです。
他人のものさしで、自分の人生を測り続けていると、いつまでたっても、「自分は足りない」と思ってしまうからです。
例えば、ある人は、「年商1000万円を達成したい」と思う。
それが、その人にとっての目標なら、素晴らしい。
一方、別の人は、「毎月10万円でもいいから、自分の好きな仕事で収入を得たい」と思う。
それも、素晴らしい。
さらに、「収入はそれほど増えなくても、組織人より自由な時間が欲しい」という人もいる。
「週3日だけ働きたい」という人もいる。
「自分の経験を若い世代に伝えたい」という人もいる。
自分にとっての「正解」は、人によって違うのです。
だから、中高年からの起業では、まず、こう問いかけてみることが大切です。
「私は、何を手に入れたら幸せなのだろう?」
お金でしょうか?時間でしょうか?自由でしょうか?社会への貢献でしょうか?自己実現でしょうか?
それとも、その組み合わせでしょうか?
起業相談では、よく、「月にいくら稼ぎたいですか?」と聞かれます。
もちろん、大切な質問です。
でも、それだけでは、不十分なのですね。
もう一つ、聞いてみてほしい。
「どんな一日を過ごしたいですか?」
朝は、何時に起きたい?
どこで働きたい?誰と仕事をしたい?
一日に何時間くらい働きたい?週に何日働きたい?
そして、こんな質問も忘れてはいけません。
「逆に、絶対にやりたくないことは何ですか?」

5.「人生」から「仕事」を考える
これは、とても大切な順番です。
普通は、「どんな仕事をするか」から考えます。でも、中高年からの起業では、逆がいい。
「どんな人生を送りたいか」
↓
「そのためには、どんな働き方が必要か」
↓
「では、どんな仕事を作ればいいか」
という順番です。
つまり、仕事を人生に合わせる。人生を、仕事に合わせすぎない。
そう、中高年の起業とは、単純に、「会社を作ること」ではありません。
それよりも、「これからの人生を、自分で設計し直すこと」なのではないでしょうか。
会社員時代には、会社のルールがあった。勤務時間があった。勤務地があった。
上司がいた。組織があった。評価制度があった。
でも、これからは、自分で、「どんな働き方をするか」を決めなければなりません。
ここで、隠れ内向型の人は、意外な強みを発揮できるかもしれません。
内向型の人は、一人でじっくり考えることができます。
周囲が、「みんなこうしている」と言っていても、
「本当にそうなのだろうか?」と立ち止まって考えることができる。
これは、「正解がない起業の世界」では、大きな力になります。
例えば、
「起業したらSNSをやらなければならない」「毎日投稿しなければならない」
「交流会に参加しなければならない」「たくさんの人と会わなければならない」
「フォロワーを増やさなければならない」
本当に、そうでしょうか?
それが、あなたの性格や、お客様に合っているでしょうか?
6.「自分に合った方法」を探す
もし、大人数の交流会が苦手なら、一対一の相談から始めればいい。
人前で話すのが苦手なら、文章で発信すればいい。
SNSが苦手なら、紹介や口コミを大切にすればいい。
毎日投稿が負担なら、週1回、丁寧な記事を書けばいい。
つまり、「外向型の成功パターン」を、そのまま真似しなくてもいい。
いや、むしろ、真似してはいけないのです。
そうです。「自分の性質」に仕事を合わせるという考え方です。
これが、「隠れ内向型」にとって、とても重要です。
今までは、自分を、仕事に合わせてきた。会社に合わせた。
組織に合わせた。上司に合わせた。社会に合わせた。
でも、これからは、少しずつ、逆にしてみる。
「仕事を、自分に合わせていく」のです。
7.「外向型になる」のではなく「内向型を活かす」
これまでの旅で、主人公は、「自分が内向型かもしれない」と氣付きました。
そして、一時は、「では、外向型にならなければ」と思ったかもしれません。
営業を頑張らなければ。人脈を作らなければ。
もっと話さなければ。もっと目立たなければ。
もっと積極的にならなければ。
でも、今なら、もう分かるはずです。「外向型になる必要はない」のです。
そう、自分を、別人に変える必要はない。
内向型を、外向型に変える必要もない。
必要なのは、「自分の特性を、どう使うか」を考えることです。
例えば、
「人付き合いが疲れる」
↓
「だから、一対一の仕事を選ぶ」
「大勢の前で話すのが苦手」
↓
「だから、文章や少人数の場で伝える」
「一人で考えるのが好き」
↓
「だから、企画や文章作成に時間を使う」
こうやって、弱点を、「働き方の設計条件」に変えるのです。
起業というと、「何をするか」ばかり考えます。
でも、同じくらい重要なのが、「何をしないか」です。
例えば、・毎日SNS投稿をしない
・無理な交流会に行かない
・苦手な飛び込み営業をしない
・嫌な人とは無理に付き合わない
・家族との時間を犠牲にしない
こうした、「自分を守るルール」を持つこともとても大切です。

8.「小さく続ける」ことは弱さではない
中高年の起業では、「一氣に成功する」よりも、「長く続けられる」ことの方が、大事になってきます。
月に数万円。小さな仕事を、一つ。お客様を、一人。また一人。
そして、少しずつ、増えていく。それが、いい。
それくらいの速度の方が、自分の人生に、仕事をなじませることができます。
世の中では、「若さ」が価値のように語られることがあります。
でも、中高年には、中高年にしか提供できない価値があります。
20代の悩みと、50代の悩みは、違います。
初めて管理職になった人の悩みと、20年間管理職をやってきた人の悩みは、違います。
初めて失敗した人と、何度も失敗して、そこから立ち直ってきた人の言葉は、違います。
だから、「これまでの人生」そのものが、誰かの役に立つ。
あなたが、これまで経験してきた失敗。あのとき、もっとこうすればよかった。
あの人に、あんな言い方をしなければよかった。あの会社を、もっと早く辞めればよかった。
あのとき、もっと勉強しておけばよかった。
そんな、「後悔」。
それは、消したい過去かもしれません。
でも、誰かにとっては、「大きな価値」になるのです。

9.主人公は「自分を証明する旅」をやめる
ここで、ヒーローズ・ジャーニーの主人公に、大きな変化が起こります。
旅の最初、主人公は、「自分の価値を証明したい」と思っていました。
会社を辞めた自分。起業した自分。成功した自分。
周りから、「すごいね」と言われたい。
「成功したね」と言われたい。
そんな思いが、どこかにあった。
でも、だんだん分かってきます。
いくら、人から褒められても、自分が幸せでなければ、意味がない。
いくら、売上が増えても、自分が疲れ果てていたら、意味がない。
いくら、フォロワーが増えても、本当に届けたい人に、届いていなければ、意味がない。
そこで、主人公は、もう一度、問い直します。
「私は、何のために起業したのだろう?」
会社から逃げたかったから?自由になりたかったから?
お金を稼ぎたかったから?認められたかったから?
それとも、自分の経験を、誰かの役に立てたかったから?
ここで、面白いことが起こります。
あなたが、「誰を助けたいのか?」を考えていると、そこに、「過去の自分」が見えてくることがあります。
昔の自分。会社員時代の自分。自信をなくしていた自分。
「自分には何もない」と思っていた自分。「もっと早く氣付けばよかった」と思った自分。
その人に、今の自分なら、何と言ってあげたいでしょうか?
もし、50代の自分が、30代の自分に会えたら。何を伝えますか?
「そんなに頑張らなくていいよ」でしょうか。
「もっと自分を大切にして」でしょうか。
「失敗しても大丈夫」でしょうか。
「もっと自分らしく働いていい」でしょうか。
その言葉は、もしかすると、今のあなたが、誰かに届けられる言葉なのかもしれません。
これが、ヒーローズ・ジャーニーのとても大切なところです。
主人公は、自分のために旅を始めます。
でも、旅を続ける中で、自分が経験したことが、誰かの役に立つことに氣付く。
そして、自分の物語が、他の誰かの物語と、つながっていくのです。

10.あなたの人生は「教材」になる
「自分の人生を教材にする」という言い方は、大げさに聞こえるかもしれません。
でも、考えてみてください。
あなたは、何十年もの間、毎日、「人生の実験」をしてきたのです。
仕事をして。人と付き合って。
失敗して。成功して。悩んで。
考えて。また挑戦して。
その経験は、本には書かれていない、「生きた知恵」です。
もし、今、あなたが、何かを始めていて、思うように結果が出ていないなら。
一度、立ち止まってもいい。
やめてもいい。
方向転換してもいい。
でも、その前に、これだけは、自分に聞いてみてください。
「私は、本当は何を届けたいのか?」
そして、「私は、誰の人生を少し良くしたいのか?」

11.「他人の成功」を借りない
他人の成功事例を見ることは、勉強になります。
刺激にもなります。
でも、それを、そのまま、自分の目標にしないこと。
「あの人は月商100万円だから」「あの人はフォロワー1万人だから」
「あの人は本を出版したから」「あの人は会社を大きくしたから」
だから、「自分もそうしなければ」と思わない。
その人には、その人の人生がある。
あなたには、あなたの人生があります。
隠れ内向型の人は、自分の内側に、深く意識を向けることができます。
それなのに、SNSなどで、他人の「外側」ばかりを見ると、苦しくなります。
他人の成功。他人の笑顔。他人の売上。他人のフォロワー。他人の華やかな日常。
でも、私たちが見ているのは、その人の人生の、ほんの一部分です。
では、誰と比べればいいのでしょうか?
一番いいのは、「昨日の自分」です。
昨日より、一歩進んだ。昨日より、一人と話した。
昨日より、一つ記事を書いた。昨日より、少し自分を理解できた。
それでいいのです。
中高年からの起業は、大きなジャンプより、小さな一歩の積み重ねです。
一つ記事を書く。一人に話を聞く。一つ商品を試す。
一人のお客様に届ける。一つ改善する。また一人に届ける。
この繰り返し。
そして、ある日、振り返ってみる。
すると、「ずいぶん遠くまで来たな」と思えるようになっています。

12.「大きな会社」ではなく「小さな人生の経済圏」
これからの時代、「大きな会社を作る」だけが、起業ではないと言えるでしょう。
自分の経験を活かして、小さなサービスを作る。少人数のお客様と、深くつながる。
必要なときだけ、専門家と組む。AIやデジタルツールを使う。
そして、自分の生活を守りながら、無理なく、事業を続ける。
そんな、「小さな経済圏」を自分の周りに作る。
これも、立派な起業です。
外向型の世界では、「拡大」が評価されることがあります。
売上を増やす。社員を増やす。店舗を増やす。
顧客を増やす。フォロワーを増やす。
もちろん、それが必要なビジネスもあります。
でも、あなたは、必ずしも、そこを目指さなくていい。
「一人のお客様との関係を深くする」ことも、価値なのですから。
例えば、「中高年向け起業支援」よりも、
「会社員として30年以上働いてきた、内向型の50代・60代が、自分の経験を活かして小さく起業するための支援」の方が、対象は、ずっと狭い。
でも、その人にとっては、「まさに自分のためのサービスだ」と思えるかもしれません。
これは、隠れ内向型の人が、得意とする、「深く理解する」という強みとも、相性がいいのです。
13.そして、旅の終盤へ
ここまで来た主人公は、もう、旅の最初の主人公とは、違います。
「自分は内向型かもしれない」と氣付いた。
自分の経験を、価値として見直した。誰かの役に立つことを、考え始めた。
失敗も経験した。売れない苦しさも味わった。他人との比較にも、悩んだ。
そして、ようやく、一つのことに氣付きました。
「私は、誰かになる必要はない」
外向型になる必要はない。
若い人と同じになる必要もない。大きな会社を作る必要もない。
フォロワーを何万人も集める必要もない。誰かと同じ成功をする必要もない。
必要なのは、「自分の人生を、自分のものさしで生きること」です。
そして、その人生の中に、自分の経験を活かした仕事がある。
自分が無理なく続けられる働き方がある。
自分を必要としてくれる人がいる。
自分も、誰かの役に立てていると感じられる。
それなら、それはもう、十分に、「成幸」なのではないでしょうか。

14.「他人の拍手」がなくても歩けるか
ヒーローズ・ジャーニーの主人公は、「誰かに拍手してもらうため」に歩くのではありません。
自分が、「この道を歩きたい」と思ったから、歩く。
もちろん、誰かに応援してもらうこともある。仲間に助けてもらうこともある。
お客様から、「ありがとう」と言われることもある。
でも、最終的な軸は、自分の中にある。
つまり、「自分の人生の主人公」に戻ること。
これこそ、今回の旅で、最も大切なことなのです。
会社員時代、あなたは、会社の物語の中で、生きていた。
会社の目標。会社の評価。会社のルール。会社の価値観。
でも、これからは、もう一度、「自分の人生の物語」を自分で書き始める。
そして、主人公は「帰る準備」を始める。
ヒーローズ・ジャーニーには、最後に、「帰還」があります。
旅に出た主人公は、さまざまな試練を乗り越え、「宝」を手にして、元の世界へ戻っていきます。
でも、帰ってきた主人公は、もはや、旅に出る前と、同じ人ではありません。
「成幸」とは、何か特別な場所に、たどり着くことではありません。
今いる場所で、「自分は、自分のままでいい」と思えること。
そして、「この自分でも、誰かの役に立てる」と知ること。
その二つが、そろったとき、人生の見え方は、大きく変わります。
15.では、その「宝」をどう持ち帰るのか?
ここから、最後の問いが生まれます。
「自分らしく生きることが分かったとして、それを、現実の仕事や人生にどう落とし込んでいけばいいのか?」
「内向型だから、一人で働けばいい」という単純な話ではありません。
「会社を辞めて、起業すればいい」という話でもありません。
むしろ、会社員を続けながらでもいい。
副業でもいい。小さな個人事業でもいい。地域活動でもいい。趣味を仕事にしてもいい。
誰かを支援する活動でもいい。
大切なのは、「自分の経験と、自分の性質を活かした生き方」を、
現実の生活の中に、少しずつ、持ち帰っていくことなのです。

