繊細なあなたの経験が誰かの役に立つ!〜「自分がやりたいこと」から「誰かが必要としていること」へ〜
隠れ内向型の中高年が歩む「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」⑤
前回までの記事では、「起業するなら、もっと外向的にならなければならない」という思い込みについて考えてきました。
人脈を広げなければ。毎日SNSで発信しなければ。
人前で話せるようにならなければ。自分をどんどん売り込まなければ。
そんな「外向型の起業家モデル」を、そのまま自分に当てはめる必要はありません。
なぜなら、起業とは、自分を別人に作り替えることではないからです。
むしろ、自分は何が得意なのか。何をすると疲れるのか。
どんな人となら自然体でいられるのか。
どんな仕事なら深く集中できるのか。
そうした「自分の取扱説明書」を作りながら、自分に合った働き方を、自分で設計していく。
それも、起業の大切な一面です。
そして第4回では、もう一つ重要なことに触れました。
それは、中高年の私たちは、すでに「宝」を持っているのではないか?
ということです。
その宝とは、これまでの人生で積み重ねてきた、「経験」です。
ところが・・・、ここには、一つ大きな問題があります。
それは、自分の経験ほど、自分では価値に氣付きにくいということです。
今回は、そこから始めてみましょう。
1.「そんなこと誰でも知っている」
あなたにも、こんな経験はありませんか?
誰かから、「それ、どうやったんですか?」と聞かれる。
自分では、「え?別に普通のことだけど…」と思う。
あるいは、「どうして、そんなことができるんですか?」と聞かれて、
「長年やっていれば、誰でもできますよ」と答えてしまう。
でも、本当に「誰でもできる」のでしょうか?
あなたにとって「普通」なのは、あなたが何年も、何十年もかけて身につけたからかもしれません。
例えば、営業を30年やってきた人がいるとします。
本人にとって、「お客様との会話」は当たり前かもしれません。
相手の表情を見る。少し言葉に詰まったら、質問を変える。
売り込みすぎない。相手が本当に困っていることを聴き出す。
話の流れから、相手が言葉にしていないニーズを察する。
こうしたことが、自然にできる。
でも、営業経験がない人からすれば、それは簡単なことではないのです。
ましてや、繊細な人にとっては・・・💦💦

2.「失敗」も実は経験資産になる
とくに、繊細な中高年には、成功事例だけがあるのではなく、失敗という事例もあります。
大きな失敗。小さな失敗。
人間関係の失敗。仕事の失敗。
転職の失敗。起業の失敗。
判断を誤ったこと。
もっと早く気づけばよかったこと。
若い頃には見えなかったこと。
これらも、大切な経験資産です。
なぜなら、「成功する方法」を教えられる人はたくさんいても、
「こんな失敗をしたから、こういうことには氣を付けた方がいい」と具体的に話せる人は、多くないからです。
例えば、あなたが、「会社を辞めてから、思った以上に孤独になった」という経験をしたとします。
その経験をしていない人には、その感覚は分からないかもしれません。
でも、これから会社を辞めようとしている人には、とても価値のある情報かもしれない。
「辞める前に、こういう準備をしておいた方がいい」
「最初の数か月は、こんなことが起きた」
「この時期に、こういう人に相談しておけばよかった」
そんな話は、誰かが同じ失敗をすることを防いでくれるかもしれません。
つまり、あなたの失敗は、誰かにとっての「ショートカット」になるのです。

3.繊細な中高年の強みは「知識」より「文脈」
ここで、少し考えてみたいことがあります。
インターネットを検索すれば、知識はいくらでも手に入ります。
AIに質問すれば、文章も作ってくれます。
本を読めば、専門知識も学べます。
では、「経験」は何が違うのでしょうか?
それは、「文脈」です。
「こうすればいい」という知識だけではありません。
「なぜ、そうするのか」「いつ、それをするのか」「どんな場合には、やらない方がいいのか」
「相手によって、どう変えるのか」「実際にやると、どこでつまずくのか」「うまくいかなかったとき、どう修正するのか」
そうした、現実の中で使うための知恵は、長い経験の中で身についていきます。
例えば、「人の話をよく聞きましょう」という知識は、誰でも知っています。
でも、
「相手が話しているときに、どのタイミングで質問を入れるのか」
「相手が本当は話したくないことを、どう見抜くのか」
「相手が怒っているとき、すぐ反論しない方がいい理由」
「沈黙が起きたとき、あえて待つことの意味」
こうしたものは、実際に人と向き合ってきた人でなければ分からないことがあります。
これが、「知識」が「知恵」に変わる瞬間であることがとても多いのですね。

4.「自分には何もない」と思っている人へ
ここまで読んで、「でも、自分には人に教えられるようなものはない」と思った方もいるかもしれません。
「私は普通の会社員だった」「特別な資格もない」「何かで成功したわけでもない」
「大した実績もない」「人に自慢できることなんてない」
でも、ここで一つ、質問を変えてみてください。
「私は、何を達成したのか?」ではなく、
「私は、何を乗り越えてきたのか?」です。
例えば、新入社員の頃、仕事が分からなかった。人間関係に悩んだ。上司と合わなかった。
部下を持って悩んだ。会社の業績が悪化した。転職した。家族との時間が減った。
リストラを経験した。定年を迎えた。第二の人生について考えた。何かを始めようと思った。
一度、失敗した。また立ち上がった。
こうした経験は、一つひとつが、「あなたにしか語れない物語」です。
そして、その物語の中には、誰かの役に立つ「知恵」が隠れているのです。
そこで、もしよければ、一度「自分史」を書いてみてください。
立派な文章にする必要はありません。
年代ごとに、「自分にとって大きな出来事」を書いてみる。
20代。30代。40代。50代。60代。それぞれの時期に、
「何があったか」「何に悩んだか」
「何を決断したか」「何を失ったか」
「何を得たか」「何を学んだか」
を書いていく。
そして、その中から次の3つを探してみてください。
宝① ~人より長く経験していること~
仕事でも趣味でも構いません。
「これなら、10年以上やってきた」というもの。
宝② ~人から相談されること~
自分では大したことだと思っていなくても、
「○○さんに聞けば分かる」と周囲から言われること。
宝③ ~失敗したからこそ分かること~
「これはやらない方がいい」
「ここには注意した方がいい」
「最初にこれをやっておけばよかった」
という経験。
この3つの経験を探ってみましょう。

5.そして「誰か」を一人思い浮かべる
ここからが重要です。
自分の経験を棚卸しすると、「いろいろあるな」と氣付く。
でも、それだけでは、まだビジネスになりません。
次に、「この経験を、誰に役立てられるだろう?」と考えてみる。
「中高年の会社員」「管理職になったばかりの人」
「定年を迎えた人」「会社を辞めたい人」
「初めて副業する人」「自分の経験を仕事にしたい人」
「繊細な内向型個人起業家」など。
できるだけ、「一人の具体的な人物」を思い浮かべてください。
起業すると、「多くの人に役立ちたい」と思います。もちろん、それは素晴らしいことです。
でも、「すべての中高年のため」「すべての起業家のため」「すべての会社員のため」と考えると、何を提供すればいいのか分からなくなります。
だから、最初は一人でいい。
例えば、「58歳。会社員。定年まであと2年。会社を辞めた後に何をすればいいのか分からない。でも、これまでの経験を無駄にしたくない内向型の男性」という人物を想像する。
そして、「この人が今、一番困っていることは何だろう?」と考えてみるのです。
6.「自分の経験」と「相手の悩み」が出会う場所
ここで、一つの公式を考えてみましょう。
自分の経験 × 自分の強み × 誰かの悩み
↓
提供できる価値です。
例えば、
「30年間営業をしてきた」×「人の話を聞くのが得意」×「営業が苦手な内向型中高年起業家」
↓
「押し売りせずに信頼を築く営業の方法を教える」
という可能性が生まれます。
別の例です。
「長年、管理職をしてきた」×「人の悩みを整理するのが得意」×「管理職になったばかりで部下との関係に悩んでいる人」
↓
「初めて部下を持った人のための1on1相談」
という形になるかもしれません。
さらに、
「自分自身が定年前後に悩んだ」×「文章を書くのが好き」×「定年後の働き方に悩む中高年」
↓
「定年後の第二の人生を考えるための情報発信」
という可能性もあります。
7.「経験」だけでは足りない
ここは大切なところです。
経験があれば、すぐにビジネスになるわけではありません。
「私は30年間、営業をしてきました」だけでは、「だから、何?」となってしまいます。
大切なのは、「その経験を使って、相手の何を解決できるのか?」です。
例えば、「30年間営業をしてきました」ではなく、
「営業が苦手な中高年起業家が、無理に自分を売り込まなくても、お客様との信頼関係を作れるようにする」と変わる。
すると、「経験」が「価値」に変わります。
ここで、起業の考え方を一段階変えてみましょう。
これまで、「自分は何がしたいのか?」と考えてきました。
これは、とても大切です。
でも、それだけではありません。
次に、「相手は何を欲しがっているのか?」を考える。
この二つが重なるところを探すのです。
例えば、あなたが、「文章を書くのが好き」だとします。それだけなら、趣味です。
でも、「文章を書くことで、誰かの悩みを整理する」なら、価値になります。
「人と話すのが好き」だけなら、趣味かもしれません。
でも、「話を聴くことで、相手が自分の問題を整理できる」なら、価値になります。
「長年の経験がある」だけなら、過去です。
でも、「その経験を使って、若い人が失敗を避けられる」なら、価値になります。
つまり、「自分が好きなこと」と「相手が助かること」の交差点を探す。
そこに、仕事のタネがあります。

8.「中高年だからできること」がある
ここで、改めて、「中高年」ということに注目してみましょう。
若い起業家と同じことをする必要はありません。
むしろ、若いにはまだ持てないものがあります。
それが、時間をかけて培った「文脈」です。
「あのときは、こうだった」
「こういう人は、こういうところでつまずく」
「こういう方法は、最初はうまくいっても長続きしない」
「人間関係では、こういうことが起きる」
「会社という組織は、こういうときに動かなくなる」
こうした、「現実を知っている」ということは、非常に大きな価値です。
そして、ここで、「隠れ内向型」というテーマに戻ってみましょう。
隠れ内向型の人は、派手な自己PRが得意ではないかもしれません。
大勢の人を巻き込むのが得意ではないかもしれません。
でも、一人の人の話をじっくり聞く。相手の話を深く考える。
一つのテーマを掘り下げる。文章を丁寧に書く。
長い時間をかけて信頼を築く。
そんなことは、むしろ得意かもしれません。
だから、「広く届ける」より、「深く届く」という方向性が有効的なのです。
もちろん、1000人に情報が届くことは素晴らしい。
1万人に届けば、もっと大きな影響があります。
でも、もしあなたの記事を読んだ一人が、「自分も、もう一度やってみよう」と思ったら・・・。
あなたの話を聞いた一人が、「自分の経験にも価値があるんだ」と思えたら・・・。
あなたの相談を受けた一人が、「明日から一歩進んでみよう」と思えたら・・・。
それは、とても大きな仕事ではないでしょうか。
中高年の起業では、「どれだけ大きくするか」だけではなく、
「どれだけ深く役に立てるか」
という成功の測り方があってもいいのです。

9.「成幸」という考え方
ここで、私は、「成功」という言葉を、少し違う言葉に置き換えてみたいと思います。
それが、「成幸」です。
売上だけを追いかける「成功」ではなく、自分らしく生きながら、誰かの役に立ち、自分自身も幸せになる。
そんな、「成幸」を目指してもいい。
中高年の第二の人生には、こちらの方がしっくりくる人もいるのではないでしょうか。
ここで、今回のテーマを一つの言葉にまとめてみましょう。
「あなたの過去は、誰かの未来のために使える」ということです。
あなたが20代で悩んだこと。30代で苦労したこと。40代で失敗したこと。50代で気づいたこと。60代になって初めて分かったこと。
それらは、もう終わった過去ではありません。
それらを、誰かに伝える。
誰かの問題を解決する。
誰かが一歩踏み出すために使う。
そうすれば、「過去」が「価値」に変わります。
その考え方こそが、起業も、人生も「成幸」という根幹を成すものです。

10.ヒーローズ・ジャーニーで言えば、主人公は「宝」を見つけ始める
今回の物語を、ヒーローズ・ジャーニーに重ねてみましょう。
主人公は、「自分らしく起業したい」と思って旅に出ました。そして、さまざまな試練に遭遇します。
「営業しなければならない」
「発信しなければならない」
「人と会わなければならない」
そんな壁にぶつかる。
そこで、「自分を変える」のではなく、「自分に合った方法を探す」ようになる。
さらに、自分の人生を振り返ってみる。
すると、「自分は、何も持っていないと思っていたけれど、実はたくさんの経験を持っている」ことに氣付く。
そして、その経験の中に、「誰かの役に立つ知恵」が眠っていることに氣付き始める。
これが、主人公が旅の途中で見つけた、「最初の宝」なのです。
ここから主人公は、もう一歩、外へ出なければなりません。
今度は、「自分の世界」ではなく、「相手の世界」を見る。
相手は何に困っているのか。何を怖がっているのか。
何を諦めているのか。何を望んでいるのか。
何にお金を払ってでも解決したいと思っているのか。
そして、「自分の経験が、その人のどこに役立つのか?」を探す。
ここから、「自分探しの旅」は、「誰かの役に立つ旅」へと変わっていきます。

11.あなたの「経験」はまだ完成した商品ではない
ここは、焦らなくても大丈夫です。
「自分の経験には価値がある」と氣付いたからといって、すぐに商品を作る必要はありません。
まずは、一人の人の話を聴いてみる。
一人の人に、「こんなことで困っていませんか?」と聴いてみる。
自分の経験を話してみる。記事を書いてみる。小さな相談を受けてみる。反応を見てみる。
そこから、少しずつ、「経験」→「知恵」→「価値」→「サービス」へと変えていけばいいのです。
とくに、中高年になってからの起業では、いきなり大きな賭けをする必要はありません。
むしろ、「小さく試して、反応を見て、修正する」というやり方が合っている場合があります。
一人に話してみる。一つの記事を書いてみる。一つの相談を受けてみる。一つの小さな商品を作ってみる。
一人から感想をもらう。
そして、「何が役に立ったのか?」「何が分かりにくかったのか?」を考える。
それを繰り返すのです。これらのことは、隠れ内向型にとても向いています。
なぜなら、大勢の前で、「私はこれができます!」と宣言する必要がないからです。
一人と話す。考える。作る。試す。改善する。また一人と話す。
そんな小さなサイクルでも、十分に前へ進めます。
そして、その小さな積み重ねが、やがて、「自分だけの仕事」になっていくのです。
12.あなたの人生はまだ「完成品」ではない
ここまで読んで、「自分の人生なんて、大したものじゃない」と思っている方へ。
あなたの人生を、「成功したか、失敗したか」だけで評価しないでください。
20代のあなたには、20代の経験しかなかった。
30代のあなたには、30代の経験しかなかった。
40代になって、初めて40代の景色が見えた。
50代になって、初めて分かったことがある。
60代になって、「あのときの経験には、こんな意味があったのか」と氣付くこともある。
人生は、後から意味がつながっていくことがあります。
だから、あなたの過去は、まだ「完成品」ではないのです。
あの失敗。あの挫折。あの人間関係。あの転職。
あの苦しかった仕事。あの「辞めたい」と思った日。
あの「もう無理だ」と思った瞬間。
そのときは、「なぜ、こんなことが起きるのだろう」と思った💦💦。
ホント、わからなかった💦💦。
でも、今になって振り返れば、「あの経験があったから、今の自分がいる」と思えることも多くある。
そして、その経験を、今度は誰かに渡す番なのです。

13.旅の主人公は「宝」を持って次の試練へ向かう
ヒーローズ・ジャーニーの主人公は、旅の途中で、「自分が何者なのか」を少しずつ知っていきます。
そして、「自分が持っているもの」にも氣付いていく。
でも、まだ旅は終わりません。
むしろ、本当の試練はこれからです。
「自分の経験には価値がある」と分かった。
「誰かの役に立てるかもしれない」と思った。
では、「その誰かは、本当にそれを必要としているのか?」
そして、「自分の経験を、どうすれば相手に届く価値へ変えられるのか?」
ここから主人公は、「自分の世界」から、さらに一歩、「相手の世界」へ入っていきます。

