隠れ内向型は「本当の自分(潜在意識)」を隠してしまう/なぜ「できる人」ほど自分の声を聞けなくなるのか?第4回

なぜ「できる人」ほど、自分の声を聞けなくなるのか
~「できる自分」が、本当の自分を隠してしまう~

「あなたは、何でもできる人ですね」
そんな言葉を、これまでに言われたことはありませんか?

仕事ができる。人付き合いもできる。
責任感もある。頼まれれば応える。
人前に出ることもできる。
困ったときには、周りから頼られる。

自分でも、「まあ、自分はそういうタイプなんだろうな」と思っている。

でも、もしその「できる自分」が、本当の自分を見えなくしているとしたら?

今回は、そんな少し逆説的な話をしてみたいと思います。

1.「できない人」ならすぐに氣付ける

少し極端な例から考えてみましょう。

人前で話すのが、どうしても苦手。
大勢の人といると、強いストレスを感じる。
一人でじっくり考えるほうが圧倒的に楽。

そんな人なら、「自分は人付き合いが得意ではないな」と比較的早く氣付くでしょう。

そして、「自分は内向的なタイプなのかもしれない」と考えるきっかけも生まれやすい。

ところが、人前で話せる。
営業もできる。会議でも発言できる。
人と会うこともできる。リーダーも務められる。

そういう人は「自分は内向型ではない」と思いやすい。
でも、ここには一つ、大きな落とし穴があります。

それは、「できる」と「向いている」は別だということです。

そう、私たちは、いつの間にか、「できること=自分に向いていること」だと考えてしまいがちです。

仕事ができる。
だから、この仕事が向いている。
人と話せる。
だから、社交的な性格だ。
責任を果たせる。
だから、責任ある立場が向いている。

でも、本当にそうでしょうか。

たとえば、
料理ができる人が、
毎日料理をしたいとは限りません。

人前で話せる人が、
毎日人前に立ちたいとは限りません。

営業ができる人が、
営業をしているときにエネルギーが増えているとは限りません。

能力と適性。
能力と好み。
能力とエネルギーの回復方法。

これらは、それぞれ別のものなのです。💦💦

2.「できてしまう」という才能

ここで、隠れ内向型の特徴が見えてきます。

隠れ内向型の人の中には、「適応する力」が高い人がいます。

必要だと思えば、人と話す。
仕事なら、営業する。会議なら、発言する。
リーダーになれば、チームをまとめる。
「仕事なんだから」と思えば、できる。

つまり、外向的に振る舞うことができる。
これは一つの能力です。決して悪いことではありません。

むしろ、社会の中では大きな強みになることがあります。
ただし、問題はその先です。

人間は、できることを繰り返します。
できる。褒められる。
評価される。頼られる。

すると、「もっとやろう」と思う。
そして、さらにできるようになる。

すると、「この人は、これが得意なんだ」と周囲も認識する。

本人も、「自分はこれが得意なんだ」と思う。

こうして、「できること」が「自分らしさ」に変わっていきます。

でも、ここで一度立ち止まってみましょう。

その「得意」は、本当に自分が好きだったのでしょうか?

それとも、「必要だったから身につけた能力」だったのでしょうか。💦💦

3.子どもの頃から「適応」してきた人

これは、子どもの頃まで遡ることがあります。

「ちゃんとしなさい」
「人に迷惑をかけないように」
「もっと積極的に」
「みんなと仲良くしなさい」

社会の中で生きていくために、私たちはさまざまなことを学びます。
もちろん、それは必要なことです。
人間は一人では生きていけません。

周囲と関わる力も必要です。

でも、その中で「本当はどう感じているか」より、
「どう振る舞えば受け入れてもらえるか」を優先する癖がつくことがあります。

静かにしていたい。でも、明るく振る舞う。
一人でいたい。でも、みんなと遊ぶ。
じっくり考えたい。でも、すぐに答える。
疲れている。でも、「大丈夫」と言う。

そうやって、「感じる自分」より「適応する自分」が前に出るようになる。

そして、それが「普通」になってしまうのです。

最初は、無理をしていたのかもしれません。
でも、何度も繰り返していると、無理をしていること自体に氣付かなくなります。

人前に出る。笑う。話す。
頼まれたら引き受ける。責任を果たす。
それが当たり前になる。

そして、いつしか「これが自分だ」と思うようになる。
ここが、隠れ内向型の難しいところです。

本人は「演じている」という自覚がありません。
本当に、その役割を果たせるのです。

だから、「無理しているんじゃないですか?」と言われても、
「いや、別に」となる。

でも、帰宅すると「一人になりたい」と思う。
休日になると「誰とも会いたくない」と思う。
何日も人と会い続けると「静かな場所に行きたい」と思う。

それでも、「自分は人付き合いが苦手なわけではない」と思っている。

この矛盾が、「隠れ内向型」という言葉の面白いところでもあります。

4.「疲れるけど、できる」という状態

ここで、一つチェックしてみてください。

あなたは、「できるけれど、疲れる」ことがどのくらいありますか?

たとえば、
・人前で話すこと
・大勢の人と会うこと
・会食や飲み会
・長時間の会議
・電話でのやり取り
・絶えず人から話しかけられる環境
・予定が詰まった休日
・SNSでの交流
・即座に判断を求められること

もちろん、人によって違います。
これらがすべて苦手という意味ではありません。

むしろ、「楽しいし、できる」という人もいるでしょう。

でも、その後、自分はどうなっているか。ここを見てほしいのです。💦💦

元気になるのか。
それとも、静かな場所に行きたくなるのか。
誰かと話したくなるのか。
それとも、一人になりたくなるのか。

ここも、とても大切です。

人と会って疲れるからといって、「人が嫌い」とは限りません。
むしろ、「人と会うのは楽しい。でも、続くと疲れる」という人もいます。

これは矛盾ではありません。

楽しいけれど、エネルギーを使う。
好きだけれど、回復には一人の時間が必要。

そういうことは十分にあり得ます。

だから、「好きか嫌いか」だけではなく、「自分のエネルギーがどう動くか」を見ることが大切なのです。

5.「人付き合いが苦手」ではなく「人付き合いで消耗しやすい」

これは、隠れ内向型を理解するうえで、とても重要な違いだと思います。

「人付き合いが苦手」というと、コミュニケーション能力が低い。
人見知り。社交性がない。そんなイメージになりやすい。

でも、「人付き合いで消耗しやすい」というのは、まったく別の話です。

コミュニケーション能力は高い。
相手の気持ちもよくわかる。
その場に合わせることもできる。

だからこそ、相手に合わせすぎてしまう。

周囲をよく観察する。場の空気を読む。相手に氣を配る。

そして、氣付かないうちに、自分のエネルギーをたくさん使っている。
そんなこともあります。

そう、「氣を使える人」ほど、自分に氣付きにくいのです。
これは、少し皮肉な話です。

周囲に氣を配れる人ほど、「自分がどう感じているか」より、
「相手がどう感じているか」を先に考えてしまいます。

「この人はどう思うだろう?」
「場の雰囲気は大丈夫かな?」
「断ったら悪いかな?」
「せっかく誘ってくれたのだから……」

そうやって、自分の感覚を後回しにする。
そして、それを「優しさ」や「責任感」として身につけていく。
もちろん、それは素晴らしい面でもあります。

でも、他人への配慮が、自分への配慮を上回り続けると、
いつか自分の声が聞こえにくくなります。💦💦

6.「自分は何がしたい?」と聞かれて困る理由

中高年になると、「これから何がしたいですか?」と聞かれることがあります。

そのとき、「うーん……」となってしまう。
やりたいことがない。夢がない。目標が思いつかない。

でも、これは、「何もやりたいことがない」とイコールではありません。

もしかすると、「自分が何をしたいのかを聞かれることに慣れていない」だけの場合もとても多い。

これまで、「何をすべきか」を考えることには慣れてきた。
「何を求められているか」も考えてきた。
「何をすれば評価されるか」も考えてきた。

でも、「私は何をしたいのか」を考える機会は少なかった。
だから、すぐに答えられなくても不思議ではないのです。

では、「自分は何をしたいのか」がわからないとき、どうすればいいのでしょう。

頭で、「やりたいことを考えよう!」としても、なかなか出てこないことがあります。

そんなときは、「何をしたいか」ではなく、
「何をすると自分が楽になるか」から考えてみる。

「一人でいるとき、何をしている?」
「どんな場所にいると、時間を忘れる?」
「誰と話しているとき、自然体でいられる?」
「何をしているとき、無理に自分を演じなくていい?」
「何を終えた後に、心が静かになる?」

こうした小さな感覚を拾っていく。

それは、顕在意識で「答え」を探すのではなく、自分の内側からヒントを集めていく作業なのです。

7.「本当の自分」は特別な才能ではない

ここで誤解してほしくないのは、「本当の自分」という言葉を、「眠っている才能」のように考えなくてもいいということです。

本当の自分とは、「自分は何者になるべきか」という大きな答えではなく、
「何をすると自然なのか」「何をすると無理が少ないのか」「何を大切にしたいのか」
という、小さな感覚の積み重ねなのです。

だから、「本当の自分を見つける」というより、
「自分とのズレを少しずつ減らしていく」と考えたほうが、
人生の後半には合っているのです。

若い頃は、「環境に自分を合わせる」ことが必要な場面も多かったでしょう。

新人なら、会社に合わせる。
若手なら、先輩に合わせる。
家庭を持てば、家族に合わせる。
子どもがいれば、子どもの生活に合わせる。

社会人として、「自分より周囲を優先する」場面はたくさんあります。

でも、人生の後半になると、「いつまで自分を合わせ続けるのだろう」という問いが生まれてきます。💦💦

これは、「自分勝手になりたい」ということではありません。

むしろ、「これまで周囲に合わせてきた分、そろそろ自分の感覚も大切にしていいのではないか」ということです。

8.「成長」から「調和」へ

若い頃の成長には、「できないことをできるようにする」という側面があります。

苦手なことを克服する。
能力を高める。人間関係を広げる。
責任を増やす。役職を得る。収入を増やす。

それは、確かに成長です。
でも、中高年からは、もう一つ別の成長があります。

それは、「自分に合わないものを、少しずつ手放していく」ことです。

何でもできるようになるのではなく、「自分は、これはしなくてもいい」とわかる。

誰とでも仲良くするのではなく、「この人たちとの関係を大切にしたい」とわかる。

何でも引き受けるのではなく、「これは自分がやるべきことではない」とわかる。

つまり、
「足していく成長」から、「整えていく成長」へ。
そんな転換が中高年にはマッチしていくのです。

9.隠れ内向型に必要なのは「外向的になること」ではない

ここで、これまでの「隠れ内向型」の旅にもつながってきます。

隠れ内向型だと気づいたからといって、「もっと人と付き合わなくていい」ということでもありません。
「一人でいればいい」ということでもありません。

まして、「外向型の人は間違っている」という話でもありません。

大切なのは、「自分はどういう環境なら自然に力を発揮できるのか」を知ることです。

人と会うことが得意なら、それを活かせばいい。
ただし、その後に一人の時間が必要なら、それも大切にする。

人前で話せるなら、それを強みにすればいい。
ただし、考える時間が必要なら、それを確保する。

つまり、自分を変えるのではなく、自分の特性を理解して使いこなす。
それが、隠れ内向型の「成長」ということなのですから。

若い頃は、「もっとできる自分にならなければ」と思っていた。
でも、人生をある程度生きてきた今なら、「もっと自分を理解する」という方向に進めばいい。

それは、自分の人生を、自分の手に戻していく作業なのです。

これまで身につけてきた能力を捨てる必要はない。
これまで築いてきた人間関係を捨てる必要もない。
仕事を辞める必要もない。

ただ、「これは本当に自分に合っているのか?」と、一度問い直してみる。

その問いを持つだけでも、これまでとは違う景色が見えてきます。

10.「できる自分」に少しだけ聞いてみる

最後に、一つだけ問いかけてみたいと思います。

あなたが、「自分はできる」と思っていることの中に、
「本当は、そんなに好きではない」ものはありませんか?

逆に、「自分には向いていない」と思っていることの中に、
「本当は、もっとやってみたい」ものはないでしょうか。

そして、「自分は社交的だ」と思っている人なら、
「一人の時間がないと、どんなふうになるだろう?」と考えてみる。

「自分は人付き合いが得意だ」と思っている人なら、
「人と会った後、私は本当に元気になっているだろうか?」と振り返ってみる。

答えを出す必要はありません。
ただ、俯瞰的に観察してみる。

そこから、今まで知らなかった自分が、少しずつ見えてきますから。

私たちは長い人生の中で、たくさんのことが「できる」ようになりました。

だからこそ、「できる自分」を手放すのは、少し怖い。

周囲から期待されている自分。
頼られている自分。評価されている自分。
それらを否定する必要はありません。

むしろ、その「できる自分」が、ここまであなたを連れてきてくれた。

だから、感謝していい。
ただし、これから先の人生まで、「できるから」という理由だけで生き続けなくてもいい。

「できる自分」の隣に、「本当はどうしたい?」と問いかける自分を、少しずつ置いてみる。

それだけでいいのでしょうね。

11.次回へ

ここまで来ると、もう一つの大きな問いが浮かんできます。

私たちは、「自分がそうしたいから」生きているのでしょうか。

それとも、「こうするのが正しい」「こうするべきだ」「こうしたほうが周囲に認められる」
という、誰かから受け取った「正解」を生きているのでしょうか。

子どもの頃から教えられてきたこと。
親から受け取った価値観。
学校で身につけた価値観。
会社で身につけた価値観。
社会から期待されてきた役割。

そして、「こういう人生を歩むものだ」と思ってきた道。

次回は、「これは、本当に『私の人生』なのだろうか」
という問いに向き合ってみたいと思います。

もしかすると、私たちが「自分の意思」だと思っているものの中には、
長い年月をかけて身につけた、「こうあるべき」という誰かの声が、
混ざっているのかもしれません。

人生の後半だからこそ、その声と、自分自身の声を一度ゆっくり聞き分けてみたいと思います。

中高年お役立ち地位づくりの専門家 松﨑豊

中高年お役立ち地位づくりの専門家 松﨑豊

内向型の中高年起業家専門コンサルタント/しつもんファシリテーター。
「こんなはずじゃなかったのに…」と起業苦戦中の内向型の中高年個人起業家に向けた、ビジネスコンサルティングを提供。
大学卒業後、大手機械メーカーで販売戦略や品質管理に従事。40代でキャリアに挫折し、「人生の目的」を探す中で、自己啓発・心理学・脳科学の世界に傾倒。その後50代で独立するも、「成功法則」を真似ても成果は出ず、「自分らしくない努力」に疲弊。いくつものビジネス講座を受講するもピンとこず、「もう、どうすりゃいいのよ…」といった状態になる。
会社員としても、起業しても、内向型の特徴をうまく活かせず、挫折を繰り返す人生に。
しかし、やがて、「うまくいってる人は、成功法則をパーソナライズして行動をしている」ことに氣づく。そこから、これまでの学びと体験をすべて体系化し、 “自問自考”を軸とした、内向型の特徴を「強み」に転換する「パーソナライズ・メソッド」を構築。現在は、ひとりでも多くの内向型の中高年個人起業家に活躍してほしいという想いを胸に、お役立ちの地位づくり、「オンリーコンサルタント」のポジションづくりに、「1,000日伴走」する『中高年版ヒーローズ・ジャーニー』と銘打ったコンサルティングを展開中。

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